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# 14  採用に至らなかったケース


今回は、日系企業の中国現地法人の人材需要に対し、私が紹介した中国人材が採用とならなかったケースをご紹介し、その理由を探ってみたいと思います。


- 要求される人材レベルの問題 -


先日、あるITシステム企業の「中国現地法人における営業担当」の紹介を依頼されました。依頼をくれたのは、その会社の本社の人事担当の方でした。主な条件は、(1)「35歳以下」で、日本の本社で1年間研修を行うことから(2)「日本語検定2級以上の日本語能力があること」でした。日本と中国で人材の募集を行ったところ、夫々で多数の応募が有りました。


中国での候補者は中国の人材ネットワークを通じて、約 10 名を集めました。私が直接会った話を聞くことができないため、採用を行う中国の会社の人事担当に履歴書を送って、まず書類審査を行うことになりました。一部に履歴書の書き方が上手でない人もいましたが、時間的余裕も無かったため入手した履歴書には殆ど手を加えませんでした。私が採用の可能性が高いと判断した人も複数いて、何人かは書類審査に合格して面接に進めると思っていました。しかしながら、結局、全員が書類審査で不合格となってしまいました。


日本での応募者も 10 名近く居ましたが、その内 3 名が書類審査に合格しました。中国の現地法人の営業部門の中国人の責任者が日本に出張した際に面接を行いましたが、こちらも一次面接で全員が不合格となりました。営業マンとして十分にやっていけると判断していた候補者もいましたので、本社の人事担当者に尋ねてみたところ、幾つかの理由が見えてきました。


まず一つ目の理由は、「中国の現地法人が求める人材像と採用条件と、本社の人事担当者が私に説明してくれた内容に若干のズレがあった」と思われることです。2 つ目の理由は、求める人材のレベルが、私が「想定していたよりも遥かに高かった」ことです。


当初は IT システムの営業経験は必須ではないとの話でしたが、実際は、その会社の IT システム営業の基本的な知識や、日本の親会社における同様の職種の業務内容が理解できているか否かも面接の合否の基準となっていたようです。


私は、潜在能力と日本語能力の高い人材であれば、研修を通じて優秀な営業マンになれると考えていましたが、実際には IT システムの営業経験がある、即戦力となる人材が求められていたようです。


このケースは応募者の皆さんに原因があったというよりも、実際に採用を行う中国企業の人材需要が正確に把握できなかった私の責任であると考えています。応募者の皆さんには大変申し訳なかったと反省しています。


- 日系企業の中国人材に関する認識の問題 -


もう一つのケースをご紹介します。これも日系の半導体企業の中国現地法人の人材需要で、日本の親会社の人事担当からの依頼でした。業務内容は半導体の品質管理のマネージャー。条件は、(1)「半導体の品質管理の経験または素養があり」、かつ、日本の品質管理手法を実践する必要があることから、(2)「日本語レベルが高い」ことでした。


尚、半導体または他の電子部品の品質管理の実務経験が無い場合は、最初からマネージャーとしての採用は難しく、その場合はマネージャーの下のランクである主任レベルで採用となる可能性があることは当初から説明を受けていました。その場合、給与はマネージャーの 70 ~ 80% 相当額となることが想定されており、本人にもその旨の説明を行っていました。


候補者の経歴ですが、中国の大学の大学院の博士課程を中退して日本の某国立大学に留学。そこで博士課程を修了後、日本のある企業で特殊なデバイスの開発業務を4年間経験していました。その会社ではデバイスの設計以外に、デバイスの特性評価や信頼性評価も経験しており、半導体の品質管理業務の素養はあると思われました。日本の滞在期間は7年でしたので、日本語レベルは全く問題ありませんでした。本人は事情により中国に帰国することが決まっていました。


また、事前に入社した品質管理マネージャーの業務内容や必要とされる知識や業務経験も本人に説明していました。本人もこれらの条件を全て確認した上で応募の意思表示を行っていましたので、私は、採用となる可能性が非常に高いと考えていました。


しかしながら結果は不採用となりました。募集企業は採用の意思表示をしたのですが、提示された給与額がマネージャーの半額(中国の大学新卒が外資系企業に就職した場合の給与の 20 ~ 30% 増し)であったため、応募者本人が入社を辞退したのでした。私も、本人の経歴や日本語能力の高さから判断すると提示された給与はあまりに安いと感じました。


現地では日本人の責任者も面接して評価は高かったようですが、給与レベルの決定は中国人の人事担当者が行ったと思われます。私の経験や知識から判断すると、提示された給与額が当初提示した金額の半分では採用できないことは明らかですが、残念ながら日本人の責任者がそれをよく理解できていなかったことが最大の理由ではないかと思われます。


優秀な中国人を採用したいと思いながら、能力の高い人材を確保するのに十分な条件の提示ができない日系企業と、優秀な中国人の就職に対する考え方のギャップが垣間見えるケースであると思います。

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執筆者 天田 恭司  Profile

1980年 一橋大学社会学部卒業、日本電気株式会社(NEC)入社。人事第二部海外人事課などを経て、1988年 初代の北京人事総務駐在として北京駐在員事務所に赴任。1994年に帰国、人材開発部国際人事部人事課長、NECラーニング株式会社の経営研修本部グループマネージャーなどを歴任。

中国勤務経験を活かすべく、2006年に株式会社国際交流センターに転職。営業推進部長として既存事業の新規顧客開拓を行う営業全体を統括する傍ら、中国人材活用ビジネスの立ち上げも受け持つ。本コラムでは、日本企業に直接ヒアリングを行える立場から、企業のリアルな本音やニーズを紹介していく予定。

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