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# 3  日・中・米マネジメント比較

さて、今回は企業における社員の意識、言動規範、マネジメントスタイル等の一般的な特徴を日・中・米の 3 カ国の比較で見てみましょう。


1) 業務に対する意識・考え方
   日本: 集団利益を追求。責任は分担 (=不明瞭)。従業員の忠誠心を前提にモラールの向上施策を推進
   中国: 企業の利益以前に国家・民族の利益を重視。但し、個々人が各々の目標を追求する傾向は強い
   米国: 個人が各々の目標を追求することで企業全体の利益を実現。職場に競争原理を導入することで従業員   のモラールを向上

2) 言動規範
   日本: 慣習・慣例・伝統的職業道徳観等の影響が濃厚
   中国: 個々人の解釈・裁量に依る部分が大。人治>法治の傾向が強い
   米国: 制度、契約、職務記述書といった明文化されたものに依拠

3) コミュニケーションの特徴
   日本: トップダウンとボトムアップの双方向
   中国: 上意下達の一方的なトップダウン傾向が強い
   米国: トップダウンと結果のフィードバック

4) 勤務態度と社員の価値観
   日本: 自発的。職務より人が優先する。職務は人に付いている
   中国: 中庸的。状況に応じて変動する。
   米国: 市場的。人より職務が優先する。人は職務に合わせる

5) 昇進・昇格時の着眼点
   日本: 将来的な潜在能力と素質を重視する
   中国: 過去の言動や品性に問題ないか、信用できるかを重視する
   米国: 現実的な知識、スキルと個性を重視する

6) 評価のポイント
   日本: 能力・勤務態度・業績等の総合的評価。相対的評価。
   中国: 中庸的。上司に対しては人徳を重視し、下級者に対して結果を重視
   米国: アウトプット(業績)中心。結果重視。絶対的評価

7) 処遇のポイント
   日本: バランス重視
   中国: 納得性重視
   米国: 市場性重視

(参考資料: 電通総研レポート 2000年度- 3 グローバリゼーションで変わる価値観)

どうでしょう。かなり顕著な違いがあることがわかると思います。皆さんが実際に日系企業で勤務する場合は、これらの複数の要素が絡み合い、更にコミュニケーションスタイルの違いも加わって問題が発生する可能性が高くなります。


- 「ハイコンテクスト文化」 と 「ローコンテクスト文化」 -


ここで日本人のコミュニケーションの特徴を更に詳しく説明するために「ハイコンテクスト文化」と「ローコンテクスト文化」について説明します。「コンテクスト(context)」とはコミュニケーションの基盤となる「言語・共通の知識・体験・価値観」等を意味します。ハイコンテクスト文化とはコンテクストの共有性が高い文化のことで、物事を伝える努力やスキルがなくても、お互いに相手の意図を察しあうことで、なんとなく通じてしまう環境です。「言葉の裏を読む文化」とも言われますが、この文化が最も発達しているのが日本といわれています。


<ハイコンテクスト文化の特徴>
    ・ 直接的表現より単純な表現や凝った描写を好む
    ・ 曖昧な表現を好む
    ・ 「常識」が共有されているため、具体的に言葉で示さなくても言いたいことがかなり正確に通じる
    ・ 多くを語らない
    ・ 包括的、比喩的表現を好む


例えば、上司が部下に対して「A君。あの件はどうなった?」と尋ね、部下が「あれは指示通りに処理しました。問題ありません」と答えたとします。共通認識を持たない人がこの会話を聞いても何のことかさっぱりわかりませんが、共通認識を持つ2人の間ではしっかりとコミュニケーションが行われているのです。


一方、ローコンテクスト文化は「言葉の裏を読まなくて良い文化」で、コミュニケーションの方法が大きく異なります。コンテクストに依存せず、あくまでも言語によりコミュニケーションを図ろうとします。そのため、コミュニケーションに関する諸能力(論理的思考力、表現力、説明能力、ディベート力、説得力、交渉力)が重視されます。
米国、ドイツ、スイス等の欧米諸国はローコンテクスト文化が発達しているといわれています。


<ローコンテクスト文化の特徴>
    ・ 分析的、直接的で解りやすい表現を好む
    ・ 単純でシンプルな理論を好む
    ・ 明確な口頭での伝達や文章表現を要求する
    ・ 寡黙であることを評価しない
    ・ 明示的な表現を好む


- ハイコンテクスト文化の日本企業でうまくやっていくには -


韓国・タイ・ベトナム等のアジア諸国はハイコンテクスト文化の国であり、中国もハイコンテクスト文化の国といえます。しかし、この文化が最も発達している日本人は、同じ文化圏であるアジアの諸国の皆さんとの間でもコミュニケーションがうまく行かない場合が多いようです。
ハイコンテクスト文化とローコンテクスト文化の特徴や違いについて説明してきましたが、どちらがいいとか悪いとかは問題ではありません。但し、世界にはローコンテクスト文化とハイコンテクスト文化があり、日本はハイコンテクスト文化が最も発達している国であることを認識しておいてください。また、日本人と接する場合は、「相手の意見を熱心に聞いて信頼関係を築く」、「自分が理解できなかったことはそのままにせず、必ず確認する」ことを意識していただきたいと思います。そのためには一定レベル以上の日本語能力を有していることが大前提となります。


次回は日系企業で勤務する中国人社員から見た日本人の問題点、日本人社員から見た中国人の問題点を実例に基づいてご紹介します。

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執筆者 天田 恭司  Profile

1980年 一橋大学社会学部卒業、日本電気株式会社(NEC)入社。人事第二部海外人事課などを経て、1988年 初代の北京人事総務駐在として北京駐在員事務所に赴任。1994年に帰国、人材開発部国際人事部人事課長、NECラーニング株式会社の経営研修本部グループマネージャーなどを歴任。

中国勤務経験を活かすべく、2006年に株式会社国際交流センターに転職。営業推進部長として既存事業の新規顧客開拓を行う営業全体を統括する傍ら、中国人材活用ビジネスの立ち上げも受け持つ。本コラムでは、日本企業に直接ヒアリングを行える立場から、企業のリアルな本音やニーズを紹介していく予定。

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