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# 2  中国人と日本人の勤労観の違い

さて、初回のコラムで中国人の採用に関して「せっかく育成したのに直ぐに辞めてしまう」という懸念を口にする会社が多いと書きました。その理由はいくつか考えられますが、私は主に以下の2つの理由によるものだと思います。


理由 1 )中国人と日本人の勤労観にかなりのギャップがある。


理由 2 )日本企業における年功序列・終身雇用という考え方は崩れてきてはいるものの、まだ完全に脱却できていない。


それでは、具体的な例を示していきます。まず、勤労観の違いですが、これを最もよく表していると思われるのが次の資料です。ここでご紹介する調査項目は「条件の良い会社があれば移りたい」と「能力や実績に応じて給与が支払われる方が良い」です。調査は 2000年に実施され、数字はYesと答えた人の比率です。日本人と中国人の勤労観は見事に対極にあると言えます。



【勤労観の各国比較】日本中国韓国タイシンガポールインドインドネシアアメリカイギリスフランスドイツ
能力や実績に応じて給料が支払われるほうが良い49.873.964.271.269.863.669.973.960.258.568.2
条件の良い会社があれば移りたい36.660.453.543.749.152.251.048.152.567.741.6


中国人の皆さんの転職志向が強いことは、私が北京に駐在している時に何度も経験しました。NEC の北京事務所に在籍していながら、欧米のコンペティターに転職の売込みを行った中国人社員もいました。これは極端なケースかもしれませんが、採用してから 5 年以上勤務した中国人社員は半数程度であったと記憶しています。


北京では日系企業の人事・総務関係者との定期的な情報交換会を行っていましたが、各社の人事担当者は大なり小なり優秀な中国人が定着してくれないという悩みを抱えていました。ここで考えてみたいのは、「直に辞めてしまう中国人側に問題があるのか、辞められてしまう日系企業側に問題があるのか ? 」という点です。私自身は日系企業側にも問題があるのではないかと感じていました。


当時、日本企業の駐在員事務所や海外現地法人の重要ポストは殆どを日本人が占めており、経営や仕事のやり方も日本的なものをそのまま持ち込んでいる会社が大半でした。日系企業で勤務する中国人は「欧米企業より給与水準が低い」、「どんなに頑張って成果を上げてもボーナスや昇給に殆ど差が無い」、「能力や実績に応じたポストを与えてもらえない」等の不満をよく口にしていました。


結果として、優秀な中国人が日系企業を退職して欧米企業に転職するという例を数多く見てきました。「日系企業は欧米企業の人材育成担当」という皮肉な意見も有りましたが、ある意味ではこの意見は正しかったのではないかと思います。


- 日本人の勤労観と企業経営の特徴 -


ご紹介した勤労観の調査結果でもう一つ特徴的なのは、日本では 2 つの調査項目の値が、他の国々と比較して極端に低いことです。従来の日本的経営の三大特徴として、「終身雇用」、「年功序列」、「企業内組合」があげられますが、これらは戦後の経済復興期においては大きな力を発揮していました。


ところが「バブル崩壊」後、これらの日本的な雇用慣行が崩壊しつつあります。特に終身雇用制・年功序列については多数の企業におけるリストラの実施や成果主義の導入により、一部の会社を除き、表面的には存在していないと言っても良いほどです。しかしながら、中高年齢の管理者には、これらの考え方の影響を受けている人がまだ大勢いるということは知っておいた方が良いと思います。


- 転職について -


中国人の皆さんの転職志向が強いことは勤労観の調査結果からも明らかですが、最近の日本でもリストラに伴う転職や「第二新卒」と呼ばれる新卒入社 3 年以内の社会人の転職が増えています。新卒で入社して数年で直に会社を辞めてしまうと、これまでは「就職に失敗した人、我慢ができない人」とマイナスイメージで見られることが多かったのですが、最近は社会人としての基本マナーを身につけており、他社の企業風土に染まりきっていない等の点が評価され、積極的に採用する企業が増えています。


第二新卒専用の転職支援サービスもあるほど、その数が増えているようです。私自身も最近転職を経験しましたが、仕事のやりがいやキャリアアップを目的とした転職は今後間違いなく増加すると思います。優秀な中国人を定着させることができないのは、日本企業側の社員の意識やマネジメントにも原因があるのではないかと思います。


孫子に出てくる有名な言葉に「彼を知り己を知れば百戦危うからず」がありますが、これは中国人の皆さんが日本企業に溶け込んでうまく仕事をやっていくためのポイントにもなります。日本人の勤労観と中国人の勤労観の違いを認識しておくことは非常に重要ですが、更に、一般的な日本企業のマネジメントや仕事の進め方の特徴を知っておくことにより、皆さんが日本企業において活躍できる可能性が更に高くなると思います。


次回は、日本・中国・アメリカとの比較を中心にこのテーマについてご説明したいと思います。

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執筆者 天田 恭司  Profile

1980年 一橋大学社会学部卒業、日本電気株式会社(NEC)入社。人事第二部海外人事課などを経て、1988年 初代の北京人事総務駐在として北京駐在員事務所に赴任。1994年に帰国、人材開発部国際人事部人事課長、NECラーニング株式会社の経営研修本部グループマネージャーなどを歴任。

中国勤務経験を活かすべく、2006年に株式会社国際交流センターに転職。営業推進部長として既存事業の新規顧客開拓を行う営業全体を統括する傍ら、中国人材活用ビジネスの立ち上げも受け持つ。本コラムでは、日本企業に直接ヒアリングを行える立場から、企業のリアルな本音やニーズを紹介していく予定。

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