
今中国本土では、大学 4 年間の勉強を終えてから修士課程に進学する学生が多く、大学院に進学することが珍しくなくなってきています。なぜこのような高学歴化の動きが出てきたのでしょうか。それはやはりここ数年来の、中国の高等教育の規模の拡大に関係があるかと思われます。
中国での大学募集規模の拡大は 1999 年から始まりました。2006 年まで大学の新規入学者は 540 万人に上り、1998 年108 万人の 5 倍ほどになっています。2006 年の在学者総数は 2,500 万人となり、現役高校卒業生の 22% が高等教育を受けています。そこで、多くの学生は大学を卒業してすぐに就職するのではなく、中国国内の大学院、あるいは外国の大学院に進学を希望し、就職に少しでも有利な条件を作りたいと考えているのかもしれません。
一方、日本の場合は少子・高齢化の影響を受けて、高等教育市場は変貌しているところです。18 歳人口の減少とともに、一部の大学は大学・学部の新増設や、入学定員の増加などの対応策をとっているようです。その結果、ついに 2007 年度の大学入試では、数値上、大学入学数の方が合計した受験者数を上回るという「大学全入」という現象が生じることになりました。幸い、この「2007 年問題」は起こらなかったのですが、2010 年頃には起きるのではと懸念されています。
私自身は文系を専攻して中国の大学を卒業し、その後日本の大学院へ進みました。私の考えでは、日本の文系の教育は、常に欧米の事と欧米の最新情報を視野に入れているように思います。友人の話では、理工系や医学分野も同じようです。そのような環境では常に英語の文献を読む必要があるので、学部生であっても、院生であっても、英語が全く出来ないというのは大変困ることです。ですから、この少子化時代に、中国人学生が日本の大学院に入ることが出来れば、学生と日本の大学双方にとって、都合のいい話になるようです。
中国人学生は日本の大学院で英語圏の国々の情報と、日本の優れた研究に接することも可能ですし、日本の大学にとっては、優秀な中国人学生を受け入れることで、質のいい学生を確保することも出来ます。一定数のハイクオリティーの学生が来てくれれば、大学にとって、「大学全入」時代の質の向上と大学経営にとってプラスになるでしょう。
日本政府も少子化時代のニーズに合わせて、中国の優秀な学生に目を向けています。平成 19 年 4 月 18 日に開かれた教育再生分科会(※)において、国策として 2025 年までに留学生を 100 万人受け入れる目標を掲げるよう提案し、特にインド・中国の優秀な留学生を増やすための条件整備を促したようです。
今後ますます多くの中国人留学生が母国で大学教育を受けた後に、日本の大学院に入ることができれば、日中両国の人材育成の新たな連携になって、企業にとっても、国際化の人材募集のもう一つのルートになるかと思います。近い将来にその結果が出ることを期待しています。
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執筆者 李尚波
桜美林大学 リベラルアーツ学群 講師 1989 年 7 月 北京外国語大学日本語学部卒業。 1997 年 3 月東京外国語大学地域文化研究科博士前期課程修了。 2004 年 4 月東京外国語大学博士(学術)学位取得 現在は桜美林大学 LA 学群で社会学、教育社会学、高等教育と社会参加、ジェンダー論、日本歴史文化論をテーマに研究を続け、講師として活躍中。 『女子大学生の就職意識と行動』 (2006年御茶ノ水書房)、 「女子大学生の就職行動における変化の全体像」(単、『国際教育』No.10(2004年10月)日本国際教育学会)、 「日本女大学畢業生持続就業的未来走向探析」(単、世界知識出版社『日本学研究』2004年7月北京日本学研究センター)、 「日本私学発展的現状及其特徴」(共、山西教育出版社『日本私立学校』1996年) |
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