
私は今桜美林大学で「日本教育論」という授業を担当しています。内容は主に高等教育と就職に関するものです。先日、授業中に中国人留学生から次のような質問がありました。
「先生、私は今レストランでアルバイトをしています。留学生の生活は経済的に大変なので、なるべくバイトの時間を増やしたいのですが、同僚の日本人の中年女性もなぜか私たちと同じようにバイトの時間を増やしたいと、精いっぱい頑張っているのです。旦那さんに扶養されている彼女が、どうして留学生と同じように働く必要があるのですか ? 」とのことです。
この質問に、私はまず日本の雇用の現状から説明を始めました。
日本の企業雇用体系はピラミッド式になっており、上層部には正社員、底辺にはアルバイトや派遣社員のような周辺労働者がいます。かつて日本企業の「三種の神器」は、終身雇用・年功序列・企業内労働組合と言われていました。その中でも、終身雇用は日本企業を象徴する雇用形態で、これを確保するためにピラミッドの底辺にいる周辺労働者が、一つの調節弁となっていました。
仕事の多い時は、下請け方式で他の中小企業に業務を委託し、逆に仕事の少ない時は、その委託業務を減らして、自社でその業務を済ませるなどしながら、終身雇用を維持してきたのです。
現在は、多くの日本の主婦が、旦那さんに扶養されながらも、何らかの形で周辺労働に従事する仕事をしているようです。そして、その収入をローンの返済や、子どもの塾代、または家計の補助に使っているのです。
普通の中国人にとって、日本人の主婦とはとても不思議な存在で、そのイメージさえ沸かないものです。また、仕事を持っている主婦が多い現実も全く知らないでしょう。なぜかといいますと、普通の中国人にとって、日本人の主婦とは、朝は旦那さんと子どもを「いってらっしゃい」と送り出し、日中は夫や子どものために掃除や食事の準備をする、映画で観るような専業主婦のイメージしかないからです。
映画の中では、仕事をしていない収入のない日本の主婦が描かれているのですから、よもや留学生と仕事を奪い合う主婦なんて想像もつかないのです。ですから、留学生の彼女は学生と一緒になってパートをしている主婦をとても不思議に思っているようでした。
先日、日本政府が発表した 2007 年版の「男女共同参画白書」も中国人のもつ専業主婦のイメージを裏付けています。それによりますと、日本は、女性の政界や経済界への社会進出度を示す GEM 値が 75 カ国中 42 位(2006 年)、男女間の格差の大きさを測るジェンダーギャップ指数が 115 カ国中 79 位(同)とまだまだ下位にとどまっていることが明らかになっています。社会進出が遅れている一方、パートやアルバイトなど周辺労働で家計を補っている、というところが実情でしょうか。
男女共同参画白書(概要版)平成19年版
今後、先進国である日本は女性の社会進出に関して、引き続き改善の努力をしていくべきかと思われます。とくに、日本企業の景気が徐々に回復している現在においては、女性の雇用をアルバイトやパートなどの周辺労働力のような位置づけではなく、男性と同様の条件で雇用されるような環境作りに有利な政策制定を続けていくべきだと思います。
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執筆者 李尚波
桜美林大学 リベラルアーツ学群 講師 1989 年 7 月 北京外国語大学日本語学部卒業。 1997 年 3 月東京外国語大学地域文化研究科博士前期課程修了。 2004 年 4 月東京外国語大学博士(学術)学位取得 現在は桜美林大学 LA 学群で社会学、教育社会学、高等教育と社会参加、ジェンダー論、日本歴史文化論をテーマに研究を続け、講師として活躍中。 『女子大学生の就職意識と行動』 (2006年御茶ノ水書房)、 「女子大学生の就職行動における変化の全体像」(単、『国際教育』No.10(2004年10月)日本国際教育学会)、 「日本女大学畢業生持続就業的未来走向探析」(単、世界知識出版社『日本学研究』2004年7月北京日本学研究センター)、 「日本私学発展的現状及其特徴」(共、山西教育出版社『日本私立学校』1996年) |
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