
日本に来ている留学生の多くは、学費を考えると、できれば国公立大学へ入りたいと考えている方が多いのではないでしょうか。一般的に国公立大学の学費は私立より安いためです。国公立大学に学力が及ばなくとも、学費が少しでも安く済む私立の大学に入学したいと考えている人も多いでしょう。
しかし、大学の選択は、単に学費だけの問題ではなく、その人の卒業後の就職にも関係してきますので、慎重に選ばなくてはなりません。
日本には、国立大学、公立大学、私立大学という三種類の大学があります。明治期の日本においては、どの大学の教育を受けるかによって、同じ新卒者であっても、初任給の金額が違っていました。当時の日本企業はまだ生成期にあったため、就職先として官庁より人気度が劣る企業は、報酬面で同レベルの教育を受けた新卒者に対して、国立、公立、私立の順に初任給に差をつけていました。
大正 6 年当時の三菱系大企業、日本郵船の新卒社員の初任給を例にしますと、帝国大学卒業者の月給が 40 ~ 50 円で最も高く、東京高等商業学校(現一橋大学の前身校)が 35 ~ 40 円、慶応と早稲田及びその他の地方の官立高商が 30 円、それ以外の私立専門学校では 23 ~ 25 円という相場でした(注)。このような給与の差はその後の日本のエリート校への進学指向に大きな影響を与えた一因だと思われます。
近年では日本人の就職観が変化してきており、一概に「一流大学卒業・一流企業就職コース」が好まれなくなってきています。
例えば、大企業は中小企業よりも昇進の競争が激しい事や、職場で自分の意見が通りにくいという理由で、今では活力のあるベンチャー企業に挑戦したい人や、一流大学を卒業して起業を目指す人がいるなど、成功への選択肢は多様化しています。
もちろん大企業も選ばれますが、好まれる最近の理由として挙げられるのは、“安定しているから”等、昔のエリート意識とは少し違うようです。
私は桜美林大学で講師をしており、生徒の中に中国人が半数います。これから就職活動をする生徒達に、どのような企業に就職したいかを尋ねたところ、中国人学生の大半は、中小企業より大企業への就職を希望していました。
やはり留学生からみた経済大国日本といえば、まず思いつくのは、ソニーや三菱、トヨタのような、世界に名を馳せた企業であり、このような大企業に就職することを本人だけではなく、ご両親や親戚も誇りに思うのでしょう。大企業への就職は日本に留学し勉学に励んだ本人の能力の証明でもあり、彼らの視野を広げるチャンスでもあるのです。
このような留学生が自分の希望に合った大企業に入るためには、まず大学選びから慎重に始めることをお勧めします。日本企業が外国人を採用する際には、その応募者のバックグラウンドが分かりにくい為、学歴重視とは言わないまでも、卒業した大学と専攻内容で能力を判断しがちです。少子・高齢化の影響を受けて、今、東京大学のような旧帝国大学をはじめ、多くの国公立・私立大学が進んで中国人学生を受け入れています。将来日本企業で働きたい人にとっては、良いチャンスかもしれません。是非このチャンスを活かし、将来を見据えて判断するようにして下さい。
注
天野郁夫『教育と選抜』( 第一法規、1982 年 )151 頁より数字を引用。
参考文献
天野郁夫『教育と選抜』( 第一法規、1982年 )
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執筆者 李尚波
桜美林大学 リベラルアーツ学群 講師 1989 年 7 月 北京外国語大学日本語学部卒業。 1997 年 3 月東京外国語大学地域文化研究科博士前期課程修了。 2004 年 4 月東京外国語大学博士(学術)学位取得 現在は桜美林大学 LA 学群で社会学、教育社会学、高等教育と社会参加、ジェンダー論、日本歴史文化論をテーマに研究を続け、講師として活躍中。 『女子大学生の就職意識と行動』 (2006年御茶ノ水書房)、 「女子大学生の就職行動における変化の全体像」(単、『国際教育』No.10(2004年10月)日本国際教育学会)、 「日本女大学畢業生持続就業的未来走向探析」(単、世界知識出版社『日本学研究』2004年7月北京日本学研究センター)、 「日本私学発展的現状及其特徴」(共、山西教育出版社『日本私立学校』1996年) |
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