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# 5  企業人のキャリア・ステージについて(一)


1960 年以降、日本の教育に影響を与えた学者の一人である D.E.スーパー博士(1910~94)の職業的進路選択発達理論によりますと、社会人の職業生活は年齢により、4 つの段階に分かれているそうです。


まず、10 代から 20 代までの「探索の段階と試行の段階」、それから 30 代から 40 歳までの「確立の段階」、その後、40 代から 50 代にかけての「維持の時代」、最後は、60 代以降の「下降の時代」になります。


若い人または30、40代の人達は、職業に関する探索・試行から確立へ移行する時期にいるため、現在の職業よりさらに自分自身に向いている職種や仕事を探してみたい、または現在の職業よりもっとハイレベルな領域に入りたいなどの気持ちがあって当たり前です。
外国人として日本企業で仕事を探したい場合は特にそうでしょう。


読者の中には転職をお考えの方もいらっしゃるでしょうから、皆さんが転職する際の参考として、今回はここで企業人のキャリア・ステージというテーマを取り上げたいと思います。


『大卒者の初期キャリア発達』(仙田幸子著:1995)では日本人男女を対象に、「男性のキャリア・ステージ」「総合職女性のキャリア・ステージ」「一般職女性のキャリア・ステージ」について調べてあります。性別によって、そして、同じ女性であっても、総合職かそれとも一般職かによって、キャリア・デザインの違いがあるようです。


男性の場合、
(1) 「社会に慣れ、仕事を覚える時期」( 1 – 3 年目)
(2) 「一人立ちの時期」( 4 – 5 年目)
(3) 「責任の時期」( 6 年目)
(4) 「安定・確信の時期」( 7 - 8 年目)
(5) 「夢・移行の時期」( 10 - 20 年目)
(6) 「定年」


という六つの段階があります。


総合職女性なら、
(1) 「導入・一人立ちの時期」( 1 - 3 年目)
(2) 「仕事世界のなかでの転機」( 4 年目)
(3) 「安定期」( 5 – 6 年目)
(4) 「夢を含んだ転機」( 7 – 8 年目)
(5) 「将来」


という五つの時期があるのに対して、
一般職女性は、総合職女性が負うべき仕事の責任と将来の昇進・昇格の可能性が薄いため、

(1) 「仕事を覚える時期」( 1 – 3 年目)が最初のステージになり
(2) その後 4 – 5 年目「一人立ちの時期」に入ります。
(3) 6 年目に総合職女性と同様に「安定期」に入って、
(4) 7 - 8年目は「移行期」が始まります。
(5) その後、子育てがそろそろ始まりますから、人生の未来を考える「将来」期に入ります。


同じ日本企業で働いて、なぜ女性のキャリア・ステージは男性と大きく違うのでしょう。中国では、男女に関係なく、社会人として働く場合、同じ職業なら、大体同じキャリア・ステージで生涯の職業生活を終えます。これに関しては、日本社会と中国社会の相違による部分が大きいので、女性に関する更なる分析は次回で述べたいと思います。


日本企業で働きたい中国人男性が多いので、まず最初に言及した男性のキャリア・ステージを見てみましょう。


まず男性の(1)「社会に慣れ、仕事を覚える時期」です。学生時代、卒業用件となる単位をとるために、必要な科目を履修する以外に、男子学生は自分の好きなクラブ活動などに参加したりして、在学期間中に個人の能力を伸ばすことを試みます。ところが、実際に企業に入ると、キャンパス内の生活と企業文化とのギャップを感じたり、今までの自分自身に対して挑戦することに直面する時期になります。これがきっかけで、今までの生活を見直すとともに、仕事を覚えようとする意欲が出てきます。


入社 4、5 年後、(2)「一人立ちの時期」に入ります。この時期には、会社の仕事を 3 年ほど経験したので、仕事の流れは勿論、従事している仕事が自分にとってどのような意味があるのかも徐々にわかってきます。3 年ほど企業人として生活をしてきましたから、学生からの脱皮もほぼできているかと思われます。社会人としての意識もこの「一人立ちの時期」から徐々に形成されつつあるかと考えられますが、6 年ほど経つと、同期入社の男性間の社会地位の差が出始めています。「責任の時期」はある意味では、生涯企業人として生きていく男性にとって、一つの試練期でもあると言えるでしょう。


7、8 年間働くと(4)「安定・確信の時期」に入ります。まとめ役として仕事の責任を負ってもそれなりの余裕がある時期になります。その上、(5)「夢・移行の時期」には、何か新しいことをする最後のチャンスかな、という実感があるかもしれません。企業の中堅として、この時期の企業人は仕事の熟練度が増し、企業人としての意識もしっかり持ち、最も堅実な存在として仕事をしてくれるでしょう。


企業人として生涯を終える男性は、30 年程度働くと「定年」の時期に入ります。定年後の脱「企業人」の人生プランを立てはじめなければなりません。次回に、以上述べた、彼らの企業人として過ごす人生の内訳について論じる予定です。中国人の皆さんが日本企業で働く場合の参考になればと思っております。それでは、また次回にお会いしましょう。


参考文献
仙田幸子『大卒者の初期キャリア発達』1994 年度東京女性財団助成研究、1995 年
柳井晴夫『進路選択と適性』日本経済新聞社、1975 年

執筆者 李尚波

桜美林大学 リベラルアーツ学群 講師

1989 年 7 月 北京外国語大学日本語学部卒業。
1997 年 3 月東京外国語大学地域文化研究科博士前期課程修了。
2004 年 4 月東京外国語大学博士(学術)学位取得
現在は桜美林大学 LA 学群で社会学、教育社会学、高等教育と社会参加、ジェンダー論、日本歴史文化論をテーマに研究を続け、講師として活躍中。

『女子大学生の就職意識と行動』 (2006年御茶ノ水書房)、 「女子大学生の就職行動における変化の全体像」(単、『国際教育』No.10(2004年10月)日本国際教育学会)、 「日本女大学畢業生持続就業的未来走向探析」(単、世界知識出版社『日本学研究』2004年7月北京日本学研究センター)、 「日本私学発展的現状及其特徴」(共、山西教育出版社『日本私立学校』1996年)

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