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# 4  企業に重要視される能力について


- 企業に重要視される能力について -


前回のトピックは、企業が採用したい人材像でした。企業側としては、「エネルギッシュ」「協調性・バランス感覚」「独創性・企画力」「リーダーシップ発揮」「誠実・堅実」「専門分野の知識・技術」「経営管理のコア」「企業家の資質」などを応募者に期待しています。


今回ここでは、どのような能力が、応募者個人の具体的な能力として企業に見られているか、それらの能力は具体的にどういうものであるか、どんな能力があれば、企業の期待に応えられるかという事を考えていきたいと思います。


20 世紀末に、まずアメリカで「コンピテンシー (competency) 」という人事マネジメント概念が誕生しました。社員採用の際、このコンピテンシーの概念を導入する企業が最近増えてきました。人の能力をモデル化し、専門スキル、コンピテンシー、ポテンシャルという三つのゾーンにわける方法です。


上のゾーンへ行けば行くほど顕在的で、下のゾーンに行くほど潜在的な能力となり、人間の根っこの本質部分に近くなります。コンピテンシーは、専門スキルを実際に生かすために必要なもので、ポテンシャルは基礎能力や性格的特性にあたります。


人の学力は後者の一部であり、企業は人を採用する際、すぐには判らない部分でもあるため、今まで大体の企業は大学名などを見て、必要な人材を採用するようにしてきました。


リクルート『就職ジャーナル』(No. 392 ) (2001 年 2 月)によると、企業は応募者選考の際に「自己能力」「対人能力」「専門性・ビジネスセンス」等の項目を重視するそうです。


「対課題能力」は、発想、問題分析、判断、完遂、情報収集、企画、構想、手順化、検証などを含め、「対自己能力」は、積極性、社会性・モラル、環境適応、貢献志向、自己統率を指します。「対人能力」に関しては、対人理解、表現技術、状況理解、情報伝達、関係構築、方向づけ・動機づけ、相互学習、対外的影響、育成、評価などの要因があり、「専門性・ビジネスセンス」は、営業感覚、専門性、国際感覚、効率感覚、利益感覚、事業感覚、品質感覚などを含めます。


- 文化的背景による違い:「対自己能力」「対人能力」-


これらのファクターで中国人として日本企業に応募する時最も難しいと思われるのは、「対自己能力」と「対人能力」であるかと思います。生まれ育った社会の風土が違う為、対人能力の内訳が違うからです。「対課題能力」や「専門性・ビジネスセンス」は、日本の大学や大学院で教われば、ある程度身につけられます。生まれ育った社会の文化に基づいた「対自己能力」と「対人能力」は、ある意味では、身に染込んでいる文化的な伝統に関係しており、数年間で大幅に変えられるものではないと思われます。


例えば、実際私の身の回りに起きたこんな例があります。ある 3 人が文字付きの内容を両面チラシにしたいとのことでした。そのうち 2 人は日本人で、どう組み合わせすればチラシがきれいに見えるかについて話をしながら、とてもソフトな感じで相手の意見を打診しています。傍にいる中国人は同じ仕事の立場にいる人で、お二人がしばらく話しをしてもまだ決めていないのを見て、「この頁を上にして、もう 1 枚をこのように裏面にすればいいでしょう」とさっぱりした意見を単刀直入に言い出しました。2人の日本人は「そうですよね」と言って、この会話が終わりました。


上のような会話をした時、中国人の当事者は「とても簡単な作業で、すぐに決められることなのに、どうしてそんなにぐずぐずしているかな」と私に言いました。ところが、その二人の日本人は話し合いながら、相手の意見はどうであるかを打診しながら、仕事のパートナーに気を遣っているようです。グズグズしている感覚は全くないようです。これは実際にあったシーンです。みなさんなら、どう対応したと思いますか。


「郷に入りては郷に従う」という言い方があります。生まれ育った文化によってできた性分であっても、職場でどう適応しながら、自分をどう生かしていくかを考えなければ、些細なことであっても、積み重ねにより、いつか職場の人間関係や仕事環境が期待通りにいかない結果を招くことになるかもしれません。


そのため、中国人として日本企業に勤める際には、中国文化の長所を生かしながら、日本人同僚の気配りや職場の潜在的な規則に注意を払って、毎日のお仕事を進めていった方が良いかと思われます。


参考資料:『就職ジャーナル』編集部編「就職白書2000」、リクルート『就職ジャーナル』No.392(2001 年 2 月)31 頁。

執筆者 李尚波

桜美林大学 リベラルアーツ学群 講師

1989 年 7 月 北京外国語大学日本語学部卒業。
1997 年 3 月東京外国語大学地域文化研究科博士前期課程修了。
2004 年 4 月東京外国語大学博士(学術)学位取得
現在は桜美林大学 LA 学群で社会学、教育社会学、高等教育と社会参加、ジェンダー論、日本歴史文化論をテーマに研究を続け、講師として活躍中。

『女子大学生の就職意識と行動』 (2006年御茶ノ水書房)、 「女子大学生の就職行動における変化の全体像」(単、『国際教育』No.10(2004年10月)日本国際教育学会)、 「日本女大学畢業生持続就業的未来走向探析」(単、世界知識出版社『日本学研究』2004年7月北京日本学研究センター)、 「日本私学発展的現状及其特徴」(共、山西教育出版社『日本私立学校』1996年)

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